結城浩『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』(1)

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

 全10章のうち、第5章「ライプニッツの夢」まで進む。ふう、今日はひとまず満腹。
 というのも、この第5章というのが、視点はダイナミックかつ、ミニチュア知恵の輪をピンセットを使って解きほぐすような慎重さを持ち、最後にはスッキリ感を味わえるという盛りだくさん定食なのです。
 たくさんの素材をどんどこ提供され、ちょっと途方に暮れそうになりながら、じりじりと進んでいく。そして、「そうか、あれ*1をここで使うのか!」と「僕」がひらめいた瞬間から、ぱたぱたっと視界がひらけていく。この爽快さ。前半戦終了にふさわしいボリューム感だなぁ、とほれぼれするのでした。


 もちろん、第1章のクイズから始まり、数学的帰納法、集合と論理、極限…と、その前までの歯ごたえもばっちりです。既刊と同様に、テトラちゃんのとまどいや粘り強さ、ユーリちゃんの根本を鋭く掴むようなツッコミが、数学をだいぶ昔に置いてきた、おぼつかない私の足取りを支えてくれます。
 後半がさらに手強いのですが、それをまた楽しみに、今日のところはおやすみなさい。

 僕が、翼を広げることができた、小さなきっかけ――
 その物語を、あなたは聞いてくれるだろうか。

 いったん本を閉じて、表紙を見た時に、プロローグのこの言葉が呼び戻されるように浮かんできました。ミルカさん、テトラちゃん、ユーリの3人が、浜辺から空の一点を眺めている表紙。その先にいるのがきっと、飛び立つことのできた「僕」なのだろう、そう思ったのです。

*1:ネタバレになるので具体名は避けておきます。