Anna Maria Jopek@Blue Note Tokyo

arittake2009-05-16

 すんごかったぜー。歌声を一つの楽器としてみたとすると、ヨペックさんは今まで見たどんな楽器とも違ったよ。というか楽器としてのモノが全く違う(単なるクオリティの高低の問題だけでなく)。
 クラリネットからはトランペットの音は出なくて、逆もまた然り、と、それぞれに楽器固有の音がある。んで、リードとか金管とかでカテゴリ分けをしていくとその中で近い音の楽器があり、逆に、同じクラリネットという楽器でも個体によって違う音が出る。そういう楽器ごとの関係性みたいなものを、ある程度イメージできているつもりでいたんだけども。でも、その体系的な区別に当てはめられないというか、他の楽器との比較・分類が全く不能。知らない世界の知らない楽器の音だったよ。


 初日のダイジェスト動画やレポートが公式にアップされているみたいです*1。画像をそちらから拝借。
 以下、思い出しつつ個人的レポート。

当日のヨペックさん

 クールビューティーという事前のイメージでしたが、ブルーグレーのアイシャドウで目力を強調してはいたものの、他のメイクは全体にナチュラル。この日はさらに金髪を無造作に後ろにひっつめ、いい感じで力の抜けた綺麗なお姉様でした。
 服装は右手薬指に指輪、黒の革パンにグレーのノースリーブ。このトップスがくせもので、肩から胸へスカーフを垂れ下げたような、メタリックな素材の装飾がほどこされているものの、素材はシースルー! 胸の形や背中の肉感が丸わかりで、気付いてからはもうドキドキものでした。「旦那さんが会場で観ている」と言っていましたが、アレいいんですか旦那さん!


 マイクスタンドを使ったり、手持ちにしたり、ギタリストの隣のスツールに腰掛けたり、ベーシストやドラマーの隣で演奏を聞き届けたりと、広くないステージ内をかなり自由に動き回るヨペックさん。客に背中を向ける時間も結構長かったりして。フリーダム。
 客席近くのアンプに腰掛け、アットホームな暖かい歌声を響かせる場面もありました。目の前のテーブルの人に "Don't worry, I'm not scary" と話しかけたりして、そのテーブルの女性も大興奮。私自身もステージ近くの席だったこともあり、数秒じっと見つめられる機会が何度かあって、その間はまばたきを我慢しちゃうくらいでしたよ! 美しすぎて!

ヨペックさんの歌声

 歌詞が全くわからないというのはどうなのかしら、と思っていましたが、全くの杞憂でして、歌そのものの魅力だけでおなかいっぱい、最初の曲からお口ポカーンとなるくらいに夢中でした。
 2本のマイク(うち1本はエフェクト付、フットスイッチで何種類か使い分けているようでした)を曲中でも交互に使い分けたり、時には2本同時に使って厚みを出したり。あんなマイクの使い方初めてみた。
 声そのものももちろん素晴らしく、ロングトーンのダイナミズムにゾクゾクとし、うきうきと弾むような歌があったと思えば、囁きに耳を凝らしたり。バリエーション豊かな上に、それぞれの技巧のレベルが超絶高いですよ。あと、エフェクトのかかってない方のマイクでも、ハイトーンの時に多重っぽく聞こえる声があるんですよね。あれがすごい、脳に直接くる感じ。アジア方面の民謡とかホーミーとかを連想させるような。


 どっからあんな多彩で圧倒的な声が出てるんだろう、と観察してみたのですが、「わからん」が答え。いや、今まで知っていた、いわゆる基本的なメソッドは当てはまるみたい。でも、「なんで彼女だけあんなに凄いのか」の説明にはならんかった。

  • 喉に力は入らない。
    • たとえば日本人の発声だと、喉から声が出ている感というのが聴いている側にもイメージとしてわかると思うのですが、そういうのはほとんどないです。時々喉でかすれさせるようなテクニックを使ったりすることはありましたが。
    • 基本的に喉の存在を感じさせず、顔の目〜口あたりの広い領域から、「面」で音が出ているようなイメージ。で、都合のいい時だけ喉の存在を呼び寄せるようなことができる。
  • 上半身はリラックスしている。
    • だからノーブラだったんですね!(冗談w)
  • 下半身は安定している。特にへそ下〜骨盤の位置がぶれない。
    • いや、左右に腰を振ったりはよくしてたんですけど、前後方向のぶれの話。かかとから頭まで垂直になるよう立った時、その中間地点に骨盤があるイメージ。もちろん頭を振ったり、上半身を折り曲げたりすることはあるけど、その基点が安定した状態が保たれている。意識的でなく自然に。
  • しばしば体の後ろ(背中と腰の間あたり)に手を当てる場面あり。
    • クラシックや合唱の発声でよく意識させられる場所ですね。腹式呼吸をし、かつ腹筋に力を入れると、その部分が膨らみます、というやつ。

 ね、基本がしっかりしている、ということしかわかんなかったでしょ、本当に。

ポーランド語と日本語

 演奏途中でアンチョコを持ち出すヨペックさん、何をするかと思ったら、「みなさんこんばんは、ここで演奏できて光栄です、イケメンバンドを紹介します〜♪」と日本語で歌い出す*2。客席を一発でつかみましたね、「イケメンバンド」w
 でも、この日本語の即興ソング(結構内容も盛りだくさん)はいいアイデアでしたねー。「言葉の壁を超えてポーランドの心を感じてください」というメッセージ、確かに伝わりました。この日本語MCソングがなくてもきっとそう感じられただろうけど、やっぱり親密度がここでぐっと上がりましたもの。丁寧な準備をありがとう!
 あと、最後のメンバー紹介の時に、ステージスタッフや音響、照明スタッフの方まで紹介していたのも、好感度高かったです。


 「1つポーランド語を覚えてください、"雪"という意味です」と言って歌い始めたアンコールの1曲*3。カタカナで表記するなら「シック」でしょうか。オンライン辞書でそれらしいのを探してみると、"s'nieg" がそれにあたるのかな? いささか季節外れではあるけどw、覚えたよー。
http://pingwin.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/poljap.cgi?word=%C0%E3&number=10&number2=1&number3=2&data=poljape.txt


 全編「これぞ歌姫! 黙って聴け!」って感じか、「癒し系です、黙って聴いて下さい」って感じのどちらかかと思っていたのですが(世の歌姫系へのなんたる偏見か)、こんなにたくさんの引き出しを味わえるライブだなんて、嬉しい誤算でしたよ。ダブルアンコールの最後、"Good night..." とヨペックさんが囁く時まで、本当に濃ゆく楽しい時間でした。

*1:BLUE NOTE TOKYO:movie: ANNA MARIA JOPEK アーカイブ

*2:*1の初日ダイジェスト動画、1:54あたりから

*3:*1の公式ダイジェスト動画、2:14あたりから。ベースとドラムから離れた陽気な2人にも注目w