ベディエ編『トリスタン・イズー物語』

トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)

トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)

 西洋のいわゆる「ロマンチック・ラブ」と呼ばれる恋愛観に強い影響を与えた古典、ということで、教養のために読んでみました。終わり方も含め、単に物語としてもそこそこ面白かったです。さすがに筋が素朴ではあるけどね。
 王の甥トリスタンと、隣の国の王女、黄金の髪のイズー。王のもとに嫁ぐ船の上で、誤って「愛の秘薬」を飲み交わしてしまったことから、トリスタンとイズーの2人は、死に至るまでやむことのない愛で引きつけられる。
 文中、「愛と死の秘薬」とも表現される通り、熱烈な愛が、死とわかちがたく結びついている、と前提されているのが面白いなと思いました。愛が、その人の生命までをも規定してしまう。なるほど、いわゆる「ロマンチック・ラブ」の原点ですなあ。