ケン・フォレット『大聖堂』

 先週読了。大聖堂建築の理想を目指して働く職人、聖職者と信仰、権力と陰謀、騎士と令嬢、結婚と恋愛。魔法の出てこないファンタジー小説という感じですねー。大聖堂を見る旅に出たくなることうけあい。
 中世、12世紀のイングランドについてはほとんど知らないけれど、特に事前知識なくともイメージ豊かに読むことができました。というのも、ベースはいろんな欲望がつまったヒューマンドラマですので、それをぐいぐいと読んでいくと、時代の空気や大聖堂建築の現場の風景が、追ってついてきてくれます。
 約600ページ×3巻と大ボリュームではありますが、登場人物の人数があまり拡散せず、その中で復讐・逆襲・結婚をくり広げます。なので、中断しても思い出すのにあまり苦労せず、また内容に戻ってこられるのがいいところかも。
 登場人物は善悪それぞれにキャラクターが立っていますが、特に悪役ウィリアムが強烈。「変態だー!!(AA略)」と叫びたくなる場面多数w


 長かったけど面白かった、けど手放しに絶賛できるのは自分の場合、下巻の中盤くらいまでかなー。終盤、すべてが回収されていく様子に消化不良感は全くないのだけど、どうも後味が…。最後の最後、未来に向かう解決にまで暴力がつきまとい、そのにおいにあてられた気分。聖トマス暗殺のくだりは、英国史を知っているともっと興奮できるシーンのようなのですけどね。
 暴力性から離れられないのは、中世だから、といえばそれまでなのですが、なんとなくあらゆる時代の人間もそうなんじゃないのかなあ、なんて思ってちょっと暗い気持ちになったわけで。人間が理性の皮一枚をかぶるようになって久しいけれども、むいてしまえばやっぱりまた暴力が出てくるんじゃないのかと。そんな気分で読み終えて、ニュースを見たりしています。