ミスドとジャスコのフードコート

 今日は手続き書類の郵送など、細々した仕事を順番にやっつける。大通りの桜がひっきりなしに散っていた。
 仲良しおじいちゃんおばあちゃん夫婦が、初ミスドらしき様子でドーナツを買っていて、その慣れてないのに焦ってない感じがとてもよくて、ついついじいっと見てしまった。あんな風に歳をとりたいなー。
 帰りに大きな月を見て、ふとばあちゃんのことを思い出してホロリときた。元気なばあちゃん、ちょっとしんどくなってきた頃のばあちゃん、そして目を閉じたばあちゃん。それはみんな思い浮かぶのだけど、病院にお見舞いに行った時の姿がよく思い出せない。みぞれ混じりの空、近代的な病院のだだっ広い駐車場、うすいグリーンの壁、食堂、エレベータや売店、そんなのは覚えてるのに。ちゃんと見ると泣いちゃいそうで、色々動き回ってたからだと思う。次にお見舞いに行く、その一週間前に連絡は来た。もう一度、いやもっと、まだ会えると思ってたんだ。もっと向かい合えばよかった。ごめんね、ばあちゃん。
 元気だったころ、親戚総出でジャスコに繰り出した時の話。歩き疲れたばあちゃんと2人、フードコートでみんなを待ってる間、ばあちゃんの好きなアイスクリームを食べながら、約束したことがあった。ばあちゃんの生活は、田舎のしがらみとか戦争とかで選択の余地がなかった。今は違う。自分で選びなさい、と。ばあちゃんは決められた夫を早くに亡くしている。2回も。ほのぼの初ミスドなんてありえない話だったのだ。でも私には、選べば、それができる可能性がある。私にはその約束が残っている。
 健康だいじよ。ほんとうに。波はあっても、長く生きたいです。
 帰ってきたら、パーカーのフードに桜の花びらがまぎれこんでた。